最初の目標をあえて低くすることが大切

アメリカから帰国した小野さんはサン・マイクロシステムズを退社し、株式会社アプレッソを立ち上げます。現在、小野さんがCTOを務めるアプレッソでは独特の目標設定の仕方があるのだとか。
「『ラストマン戦略』という考え方です。『ラストマン戦略』とは私の造語ですが、あるグループ内で自分が1番になれそうなポイントを見つけ、トップを目指します。
1番になれたら、今度はそのグループの対象を広げてさらにトップを目指すというもの。例えば、まず3人の友達の中で1番を目指します。1番になれたら、今度はクラス。クラスでなれたら、学年で1番に、というようにどんどん拡大していくのです。ある質問にグループの中で1番詳しい人が答えられなければ、もうその中にわかる人はいませんよね。“最後の砦の人”という意味で『ラストマン』という名前を付けました」
アプレッソでは新しく入社してきたエンジニアには、まずミーティングでどんな『ラストマン』になるか、話し合います。
「以前、未経験の人が入社してきたのです。話し合いの結果、社内にあまり詳しい人がいないインストーラーで『ラストマン』を目指すことに決めました。それからインストーラーについての勉強に集中してもらったのです。

『ラストマン戦略』は「極めていく方向」や「自分にできること」が明確になります。未経験のエンジニアでも人から尊敬されることが一つでもあると、自然に自信もついて、仕事にやりがいが出てくるのです」
『ラストマン戦略』のいいところは、目標が低いのですぐに取り掛かれるということ。そして、難しそうだった場合、気軽に目指す方向を変えられるところです。
「英語で1番を目指したのだけれども難しい。英語でだめなら英単語ではどうだろう、と挑戦します。それでもだめだったら数学で1番を目指してみよう、というように、どんどん方向転換していけばいいのです。これなら誰でも気軽に取り組めますよね。」
ブログは自身が有名になるためのツール
若いエンジニアたちについて感じることを聞いてみました。
「もっと 積極的に社外の人と交流するべきだと思います。会社の中だけに閉じこもってしまうと、社内の常識だけにとらわれてしまい、世間一般の基準がわからなくなってしまうのです。社内の基準がズバ抜けて高ければ問題ないのですが、自分の勤めている会社の基準が低いかもしれません。自分がどれくらいの位置にいるのか認識するためにも、会社以外の人と積極的にコミュニケーションをとることが重要です。」
そのための一つのコミュニケーションツールとして、ブログを書くことがおすすめだそう。ブログに趣味で作ったプログラムコードや仕事での失敗談・相談ごとといった内容を掲載してみることで、似たような価値観を持つ人と仲良くなれるのだとか。
「内容は好きなものでもなんでもいいと思います。私はWorld of Warcraft(ワールド オブ ウォークラフト)というゲームが好きなのですが、それは英語版しかないのですよ。そこですべて日本語化するアドオン(拡張ソフト)を作って公開していたら、いろいろなところから取材が来ました。もしかしたら、本業のDataSpiderの開発より、こちらの開発者として私を知っている人のほうが多いかもしれません(笑)」

「何を書いたらいいかわからない」という方がいますが、そのような場合どうすればいいのでしょうか。
「私はそういう方にはTwitter※1を勧めています。140字という短い枠組みなので、気楽に書けるのです。みんながリアルタイムにコメントを書いているので、中には『カツ丼食べた』とか『眠い』なんて書く人も。私もTwitterを通して社員募集をしたこともあります。絶大な効果でした」
Twitterやブログを通して自分からアウトプットしていくことで情報が集まってくると小野さんはいいます。新しい技術について知ることができたり、思いがけず有名な人に会えたり。
「情報を発信していくことは、自分を人に知ってもらうための一つの道。社外の人たちとコミュニケーションを図ることで、自分をどんどん成長させることができるのです。私自身、日本のソフトウェア業界の人たちと協力して、世界に通用するソフトウェアの開発に努めています。ぜひ、みなさんもステップアップしていってください」
※Twitter…個々のユーザーが「つぶやき」を投稿し合うことでつながるコミュニケーションサービス。ユーザーは自分専用のサイトを持ち、What are you doing?(今、何しているの?)という質問に対して140文字以内でコメントを投稿するというもの。画面には自分の投稿以外に、あらかじめ登録した知人など他者の投稿もほぼリアルタイムに表示される。

バランスボール
バランスボールに座って作業。これによって仕事の集中力が長時間持続できるので、効率アップできます。仕事をしながら運動不足も解消。「社内でも流行っています。初めは筋肉痛になりましたが、慣れてしまえば普通の椅子より快適です。」





